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Channel: 矢野絢子オフィシャルブログ「矢野絢子の生態系観察所(仮)」Powered by アメブロ
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5月の風景

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5月の高知がいちばん好きかもしれない、と毎年密かに思っていて。


今年ついにそれを確信したので、やけに人に言っている


「5月の高知は最高ですよ」。

寒さがやっとやわらぐのが一番の理由だと思う。寒がりだから。




わたしは街に住んだことが一度もないので、


目に映る風景には常に人がいないのが普通。


かといって大自然野朗でもなく


普通の田舎の住宅地の中、田んぼや畑があって


さびれた商店街があって、


突然駐車場がやけにひろいコンビニやヤマダデンキとかツタヤがあって


その横に埃っぽい農道が続いて、どこをみても山に囲まれてる。


そういう景色が私の原風景。


その景色がこの季節を迎えると、緑とか青とか色が濃くなって、


夏に向けて無言で呼吸を深くしてゆく感じが好き。


現実に夢が徐々に重なって、目を開けたまま夢をみてるみたいな感覚になる。



「今までの人生、ぜんぶなかったことですよ」



みたいな、ちょっとこわくてさっぱりした感じにどっか安心する。





久しぶりに20時間も眠りをむさぼって、そんな感覚でぼーっとしていたら


あっというまに夜がきて、窓をあけたままにしておくと結構寒い。


新しくできた愛しい作品と、フライヤーなんかをあちこちに送ったり


昨日のことと明日のことの隙間で、あちこちキルルクルルしたり。


けれどもいつもからだの半分は、誰もいない風景の中に立っていたいと思っている。




「今までの人生、ぜんぶなかったことですよ」



そうですか、それでは仕方ない。


また新しいうたでもつくります、まだ生きておりますので。


誰の為にもがんばるものか。これが好きだから、行く。


たぶん、尋常じゃないほどこわがりなんだろうなあ私は。


手にすることも、なくすことも。


自分のこと、ちょっとめんどくさいときもあるけど、徐々に調整しつつ修理しつつ


このいれもので生きていること、好き、と思わせてくれる


そういう時間や人が多くではなくても、いるから、よかった。




昨日も大笑いした。涙が出るほど笑ったけど、なんで笑ったかはもう忘れた。


一人では、なかなか泣くほど笑えないのである。

窓の外でカエルがみょんみょん鳴いている。


そろそろやぶ蚊も飛んでくる。網戸を直さなくてはいかん。




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